始めてみよう!わたしの星活。世界43か国145都市の星空を見てきた”旅する星空解説員”佐々木さんが伝えたい「星に寄り添う暮らし」のススメ。【前編】

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皆さまは、星空を見上げていますか?星空を見上げることで、新しい価値観が生まれたり、これまでの価値観が見直されたりするものです。最大の悩みだって、壮大な宇宙を目の前にすると、ちっぽけな悩みに思えたりします。生活の中で何かしらの変化が迫られ、複雑な時代になってきている今だからこそ、星空を見上げてフラットな自分に向き合ってみませんか。

今回は、”旅する星空解説員”として、さまざまなカタチで星空の魅力を伝えている佐々木勇太さんにインタビュー。43か国145都市を訪れ、世界各地にある天文台やプラネタリウム、星空の美しい所を巡ってきたそう。そんな佐々木さんだからこそおススメする星空の楽しみ方とは?また、どのような想いで活動を続けてきているのか、星空への想いとは?佐々木さんが抱いている価値観などもお伺いします。

前編では、佐々木さんの仕事についてや、星に興味を持ったきっかけ、それを仕事にしようと思った所以などをお伺いします。

様々なカタチで、星を伝える”旅する星空解説員”

―本日は貴重なお時間をいただきありがとうございます。現在、佐々木さんは”旅する星空解説員”としてご活躍されているとお聞きしましたが、具体的にはどのようなお仕事をされているのでしょうか?

佐々木:現在の主な仕事は、プラネタリウム解説員です。都内のプラネタリウムで星空の解説をしています。ちなみにそこでのキャッチフレーズが『旅する星空解説員』なんです。他にも様々なことをやっているのですが、その一つが、星空のツアーガイド。旅行会社と提携して、国内のみならず海外の星空ツアーも行いました。特にモンゴルやネパールでの星空ツアーは印象に残っています。

―モンゴルとネパールですか!きっと綺麗な星が見えるのでしょうね。

佐々木:もう、満天の星です!大草原で見るモンゴルの星空や、ヒマラヤの山々を臨む田舎の街から眺めるネパールの星空など、もう最高です!ちょうど12月のふたご座流星群のときにツアーガイドをしたのですが、たくさんの流れ星に遭遇しました。コロナから世界の状況も復帰しつつあり、今年の夏はモンゴルに2度行ってきました。

―羨ましいです!私も行きたい!そういえば佐々木さんは、星のイベントも色々やられてますよね。

佐々木:そうですね!イベント関係は現在もやっていて、主なものは星のトークイベントです。旅の経験をもとに写真を交えながらお話ししています。ただ、トークイベントといっても様々で、たとえば、講演会みたいなかたちであるときは教育系の講座でお話ししたり、あるときは野外音楽ライブフェスのアーティストとして星旅トークをすることもあります。来年には飛鳥Ⅱというクルーズ船での星空講演と天体観測会のガイドもさせて頂く予定です!他にも今年は中秋の名月の時期に行われたムーンアートナイト下北沢というイベントで、天体観測会とトークイベントをプロデュースさせていただきました。どれもこれもとても嬉しいお誘いでしたし、楽しくて、星空解説員冥利に尽きました!笑

イベントで星空トークをされている佐々木さん Photo by佐々木勇太

また、コロナ禍にあった2020年には、YouTubeを始めました。星にまつわるネタを1分でまとめて話す、「1minute Starry Story」という企画をやっていました。たとえば、今日はこの星座の神話について、今日はこの星座の見つけ方について、今日はこの星の名前の意味についてなど、1つテーマを決めて毎日更新していましたね。

―面白そう!1分でまとめてくれるっていうのは有難いですね。本でずらずらと文章で書いてあるより覚えやすいですね。

すべての始まりは、偶然見つけたプラネタリウム

―当初から星にまつわるお仕事をされていたのですか?

佐々木:はい、最初は天文光学機器メーカーに勤めていました。入った当初はプラネタリウムの映像制作に携わらせていただき、その後営業職を2年ほどやっていました。

―どうして天文関係を仕事にしようと思ったのでしょうか。そもそも、星を好きになったきっかけは何ですか。

佐々木:最初のきっかけは、一人で観に行ったプラネタリウム。ここで星が好きになりました。大学1年生くらいだったかな。たまたま地元の町田に買い物に行って、時間が余ったのでぶらぶらと歩いているときに、ちょうど駅前のデパートを見上げたら、その屋上にプラネタリウムがあるのを見つけました。そういえば小学校の理科の学習でここのプラネタリウム見たなぁとなんだか懐かしい気持ちに。久しぶりに見に行ってみようと屋上にあがったら、その日がたまたま無料で入れる開館記念日でした。無料なら入ってみようかな、と思って入ったのが僕の”星人生”の始まりの第一歩でした。

それとちょうどこの時代、しし座流星群の大出現(2001年11月)があって天文関係が話題になっていたのもありました。また、テレビドラマで、その町田のプラネタリウムがロケ地として使われていたのもありました。そういったタイミングも相まってプラネタリウムに足を運んだのだと思います。

実際にプラネタリウムに入ってみると、星の話が面白いのはもちろん、そのプラネタリウムっていう空間がロマンチックだなと感じました。星が見える施設、というプラネタリウムのアイデンティティというか、その存在が素敵。”空間”としてすごく気に入りました。

冬の時期は、プラネタリウムの最後の投影を見て外にでると、夕暮れで日が沈み、ちょうど星が見え始める時間帯。その町田のプラネタリウムはちょうど屋上にあったので、空が開けていて星を見上げるのにはうってつけの場所でした。「あの星は、さっき解説してくれたオリオン座の星だな」とか、プラネタリウム解説員が話してくれた星をこの目で実際に確かめることができました。これも星を見上げるようになっていったきっかけのひとつです。ただ、一回聞いたくらいでは忘れてしまうので、またプラネタリウムを観に行って、また星を見上げて、観に行って、見上げて……を繰り返していくうちに星が好きになりました。

こういった感じで星に興味をもちはじめたので、実は他の天文好きの方のように親の影響で小さなころから天体望遠鏡を使って星を見てた、みたいな根っからの天文少年ではなかったです笑。

―たしかに、天体望遠鏡というツールから星が好きになったという人は天文業界に多くいますが、佐々木さんのように、プラネタリウムがきっかけで天文業界に入った、という方は意外と少ないかもしれません。ただ、それがまたいいですね。プラネタリウムを観に来るお客さんの気持ちがよく分かりそうです。

プラネタリウム解説員への扉が開かれる

佐々木:プラネタリウムを発見してから、もう何回も観に行きました。スタッフの人と顔見知りになったほどです笑。そんな中、当時ちょうどアルバイトを募集するという話を聞きまして。この場所が好きで、ここで働きたいと伝えました。そしたら、うちで働いてみる?と言ってくれて。タイミングよくアルバイトとして働けるようになりました。

働いているうちにプラネタリウムという場所がもっともっと好きなりました。

実は、アルバイトとして働いていた町田のプラネタリウムは閉館になってしまったのですが、星を見るのがどんどん好きになっていましたし、解説員はプラネタリウムの花形で憧れもあったので、閉館前に1度、プラネタリウム解説に挑戦したい!と申し出て、幸運なことに機会を与えていただきました。

当時は初めてでやり方も分からなかったのですが、解説員の方が丁寧に教えていただき実現にいたりました。ちなみに、その解説員さんは観客としてそのプラネタリウムに通っていた時に「素敵な解説をしてくれるなぁ」と感じて、解説員に興味を持つきっかけをくれた方でした。そして、今の上司でもあります。

本番は、たった1回15分の解説でしたが、めちゃくちゃ練習しましたし、めちゃくちゃ楽しかったです。「この仕事は天職かもしれない!」と思ったのと同時に、このとき、”プラネタリウム解説員”を仕事にしていきたいと強く思いました。

―そうなんですね。ただ、プラネタリウム解説員って、多くの星の知識が必要ですし、話す力も必要ですし、なりたいと思って簡単になれる職業じゃないですよね。

佐々木:ほんとそう。難しくて、僕も最初はなり方も分からなかったですからね・笑。今でこそプラネタリウム解説員になっていますが、色々調べながら遠回りもしてしまい、結果なるまでに10年かかりました。アルバイトで働いていたプラネタリウムは閉館になってしまったこともあり、すぐにプラネタリウム解説員を目指すことはできなかったんです。

ただ、ここで終わりたくないし、ブランクを空けたくなかったというのもあり、天文光学機器メーカーに就職希望をだし、勤めることになりました。そこに就職したことで、自分は星の知識が全然ない、ということが分かったんです。そんな自分がちゃんとプラネタリウムの解説員になれるのかな?なれたとしても、面白い解説員、一流の解説員になれるのかな?というコンプレックスが湧いてきて。実はこれが、世界一周の星空の旅につながるんですけどね。

恩師が教えてくれた、大事なこと~世界へ旅立とうと決意~

佐々木:そしてもう一つ。就職した当時に驚いたのは、天文関係の会社にも関わらず、根っからの星好きではないスタッフも意外といたり、星の話をしているけれど、たとえば南半球の星やオーロラなど、実際の星は見たことがないという方が多かったことです。

そんな中、今でも恩師として慕っているあるプラネタリウム解説員の方から、とっても大事なこと教えていただきました。「話す言葉というのは、自分の気持ちがでる。だから、自分が実際に観たこと、感じたこと、感動したことを言うのが一番なんだよ」と。今でもこの言葉は自分の糧となっています。

そう考えると、星の話をする人が星をあまり見たことがないとか、実際のオーロラなどを見たことがないとかって、なんか矛盾しているんじゃないか、と感じるようになりました。

解説員の方々である皆さんは必死に星の勉強をしたり様々な努力をして、自分が得た知識で話を伝えています。それはそれで、とても素晴らしいですし、尊敬します。ただ、自分はそこを目指しても今からではなかなか追いつけない。だから、そこまで専門的な知識はないけれど、その代わり、自分の目で実際に星を見て、その体験で話せる解説員になろうと思いました。そうしたら、少し、人とは違う解説員になれるんじゃないかって。

だから、世界の星空を見に行こうと思ったんです。

世界へ旅立ち、オーロラに出会った@ノルウェー・トロムソ Photo by佐々木勇太

プロフィール

佐々木勇太

学生時代より地元のプラネタリウムに通い、星を見上げるようになる。天文光学機器メーカー勤務を経て、 『星』をテーマとした世界一周の旅へ。43 ヶ国 145 都市を訪れ、世界各地にある天文台やプラネタリウム、星空の美しい場所を巡る。帰国後も、旅で得た世界各地の神話や星の文化体験を基に、「いつでもどこでも、今すぐここでも星空を」を信念として、人々にもっと星空を見上げ楽しんでもらうきっかけを伝えるため活動中。都内でのプラネタリウム解説を始め、旅行会社との国内国外の星空ツアー企画やガイド、イベントや講演会でのトークライブ、書籍やコラム執筆、星空専門のフォトグラファーなど、様々なメディア・ツールを通して星空を語り伝え続けている。

Web:http://yuta-sasaki.com/

Twitter,Instagram:barnards_yuta

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