Co-Edit Design Office

メニュー

始めてみよう!わたしの星活。世界43か国145都市の星空を見てきた”旅する星空解説員”佐々木さんが伝えたい「星に寄り添う暮らし」のススメ。【後編】

381 views
約13分
始めてみよう!わたしの星活。世界43か国145都市の星空を見てきた”旅する星空解説員”佐々木さんが伝えたい「星に寄り添う暮らし」のススメ。【後編】

“旅する星空解説員”の佐々木さんへのインタビュー後編。最後となる今回は、佐々木さんが今後やりたいこと、星空の醍醐味や佐々木さんにとっての星空とは!?など、“星空の真髄“に迫ります!

特に行きたい場所は、本当の意味で、”自然と共存”しているアイスランド

―これからどんなことをやりたいでしょうか。

佐々木:まだまだ、世界の星空を見てみたいです。もっと世界中を旅して、世界中の色々なところで星空を見てみたいです。

特に今行きたい場所は、アイスランド。アイスランドはありのままの自然が多く残っているのと、オーロラもみることができるので。北欧とかもそうですが、向こうの人たちの暮らしが素敵だなと思うのは、自然と共存しようとしているところです。

基本的に人間って、自然を利用しているように感じます。「自然と共存する」と言いながらも、何かあったときには、科学の力を使って自然をどう抑え込むか、どう対策をとるか、という思考の流れを捨てきれていない気がします。もちろんそれはそれで、人の命や文化を守っている素晴らしい部分だとは思います。

でもアイスランドの人たちは、それでも対抗しきれない圧倒的な自然の中に身を置く環境に生きているせいか、自然に自分たちが合わせていくという考え方です。なるべく自然はそのまま残して、自分たちが変化したり、自然から少し離れることで被害にあわないようにするとか。自然の中に、人間が居させてもらっているという感覚を持っていて、そういう共存方法を実践しています。そのような自然と繋がった暮らし・生き方が素敵だなと思い、それを実際に肌で感じてみたくて、アイスランドに行きたいんです。

あともう一つ行きたい場所があって、それはアフリカ大陸の南西部、ナミビアに広がるナミブ砂漠。ここは、国際ダークスカイ協会(IDA)という空の暗いところ(=人工の明かりが少なく、星空がきれいにみられるところ)を認定している機関が、世界でも美しい星空を見ることのできる「星空保護区(ダークスカイ・リザーブ(ゴールドティア)」に認定しているところで、世界でも有数の星空スポットです。

実は2019年、モロッコのサハラ砂漠で星空を見上げてみたくて、砂漠ツアーができるという辺境の街まで行ってきました。もちろん東京などに比べれば綺麗だったんですが、自分が期待したほどの星空は見られませんでした。

―それは観光地化され、街の光が星空を遮っていたという感じでしょうか?

佐々木:その時の開催地が比較的街から近かったため、街の明かりの影響が大きかったんだと思います。ただ街自体もだんだんと大きくなっているのだとも思います。その分、街の電灯も増えるので。そういうこともあり、サハラ砂漠での星空は、少し不完全燃焼でした。なので、元々評判も高いナミビアの砂漠で、もっともっと沢山の星を見に行きたいなって思って。

―難しいですね。街を大きくするのも重要ですが、自然を残すのも大事。”自然と共存”と言うのは簡単ですが、それが本当に難しいですね。

佐々木:そうですね。やはり、街が大きくなってインフラが整ったら行きやすくはなりますし、それはそれでとてもいいことですが、気を付けなければ結局、満天の星が見られる環境に悪影響を及ぼしてしまいます。それを共存させるためには、たとえば夜になったら電気を消すとか、そういった取り組みやすい小さなことから対応を始めていけば、人間の生活と美しい星空が共存していくスタートになるのではないでしょうか。

―そうですね。そういった意味で、アイスランドは楽しみですね!どう自然と両立させているのか。

佐々木:そうですね。砂漠も奥の方にいけば、もちろん街の光は届きにくくなるのですが、代わりに危険も増していってしまいますからね。

今後は、オンラインでも魅力的に星の話を伝えられるようになりたい

―旅の他に、仕事で今後やりたいことはありますか?

佐々木:現在、コロナの期間を経て、世の中の仕事もエンターテイメントコンテンツもオンラインでの開催が増えている傾向にあるので、星の伝え方もオンラインを取り入れて考えていけたらなと思っています。プラネタリウムや実際の夜空が見えないところで、どうやって人に星の話を面白く伝えられるのか。実際その一環として取り組んだのが、YouTubeです。星座の見つけ方や、歴史、宇宙に輝く天体などを約1分間のショート動画で楽しめるようにまとめた「1minute Starry Story」というのを、2020年の1年間にほぼ毎日更新してみました。現在で300本近くアップし公開しています。自分でシナリオを書いて読んで、そして撮影した星の写真を添えて紹介しています。

家にいても、窓やベランダからは夜空を見ることができると思います。そのときにラジオ感覚でこの動画の星の話を聞いて楽しんでくれれば嬉しいです。その人のいる場所が、プラネタリウムになる。そんな感覚で利用してもらえたらと思います。

とにかく、一番やりたい仕事は、星を伝えていくこと。自分の人生の使命だとも感じているので、それが達成できるツールはどんどん活用していきたいなと思います。それが今はYouTubeだったり、本だったり。プラネタリウムでの解説もどんどん内容を充実させていきたいですし、星空のツアーガイドとしても多くの新たな星空スポットを開拓しながら、世界の様々な場所で星の魅力を伝えていけたら・・・と思っています。「星空を伝える」ということと、それを全うしようとする自分自身に、多くの可能性を見出し挑戦していきながら、具体的に仕事の幅を広げていきたいと思います。

まずは、顔を上げてみよう

―今の時代に提案したい星の楽しみ方はありますでしょうか?

佐々木:まずは気軽に星を楽しんでほしいです。たとえば、自分の部屋のベランダから星を見つけてみたり、コンビニなどちょっと外に出たときに、ついでに空を見上げてみたり。それと、これは満月の日などにオススメなのですが、家の窓から月が見えていたら、部屋の電気を消してみてほしいです。最初は真っ暗ですが、だんだんと目が慣れてきます。そのときに捉えている光は、窓から差し込んでいる月の光。その光で部屋がじわーっと照らされていくように感じるので、とても落ち着く空間になると思います。そこに自分の好きなアロマやキャンドル、間接照明を一つ加えたりすると、さらにリラックスした空間が出来上がりますよ。

ご自身のお気に入りの部屋。星や月をモチーフにしたグッズで飾られている Photo by佐々木勇太

―ちょうど家にいる時間が多くなっていますし、そういったちょっと変わった楽しみ方もいいですよね。ご自身はどのようなスタイルで星を見ますか?

佐々木:どんな状況でも、とにかく、まずは空を見上げています。そして、その日見つけられる一番輝いている星を、じーっと見ているだけでも意外と満足です笑。その時は、特に光の瞬きに注目するんです。

―それは面白いですよね!星って、瞬いていたり瞬いてなかったり、赤色だったり青白っぽくみえたり。実は星には個性があってそれを見つけるのは面白いですね。

佐々木:そうそう!色の違いや明るさの違い、瞬くか瞬かないかなどを比べるのも面白いですし、瞬いている星の点滅を見ようとすると、いつの間にか夢中になってしまいます。最近キャンプが流行っていますが、たとえば、ただひたすら焚火の炎をじーっとみて癒される人も多いと聞きます。それが、僕の場合は星の瞬きなんです笑。

―自分なりの星の楽しみ方を見つけると、さらに星が好きになりますよね。暗い場所に行って星空を見ることはありますか?

佐々木:最近は、先ほども挙げたキャンプが、暗いところに星空を見に行くタイミングと重なってきています。キャンプ場って自然が多い場所に作られているところが多いので、天気が良ければきれいな星空が見られる可能性が高いんですよね。しかもキャンプをしながらなので、焚き火や料理や飲める人はお酒などと合わせて、夜の楽しみがまた一つ増えることになります。僕は星空ありきでのキャンプですが、コロナ禍でキャンプを始めた方も多いと聞きますので、ぜひその中に星空を楽しむ時間も作っていただければ嬉しいですね!その他、星空を見るならやっぱり空が暗いところで星を見たいですよね。でもなかなか行けない・・・という場合は、東京で夜景と一緒に星を見るのもいいです。少し都心から離れた小高い丘に行ってみたり、せめて空が開けている川や海に行ったりすると、都会でも星が楽しめる確率が増えるので狙ったりします。なぜなら空が開けているというのは、ビルなどの建物に遮られず、星が輝いて見える空の範囲が広くなるということですからね。

結局は、自分が行きたい場所で星を見るのが一番ですね。一番大切なのは、満天の星を見に行くことよりも、「星空を見上げる」こと自体。どんなに星が綺麗な場所に行っても、見上げるっていう意識や行為がなければ見られない。どんな大きな数にゼロを掛けても、答えはゼロというのと似ていると思うんです。

だから、自分がしたい暮らしの中で、ちょこっとだけ、星を見上げる時間を作ってみる。そうすることで、その暮らしが一気に2倍も3倍も豊かになると思います。ありがたいことに、星はいつでもどこでも、空に輝いていますし、人のどのような生活にも寄り添ってくれます。星は、そんな大きなポテンシャルを持っていると思います。

箱根_仙石原にて Photo by佐々木勇太

―星を見ることについて読者に伝えたいことはありますか?

佐々木:繰り返しになってしまいますが、やはり、まずは身近なところで空を見上げてみてほしい、という一言に尽きます。”星を見る”っていうと、何か準備が必要なんじゃないかとか、どこか特別な場所に行かないといけないんじゃないかとか、天文現象が起こるタイミングを計ったり知識を持っていないといけないんじゃないかとか、ハードルが高く思われてしまうこともあるのですが、そんなことは全くないです。星は、夜になれば自然に輝き始めます。することと言えば、空が見えるところに行って、首を曲げて顔を上に向けるだけ。難しいことは一切ないですし、何も準備しなくてもできます。ほんの少しでもいいので、まずはパッと空を見上げてみてほしいです。

多摩川河川敷Photo by佐々木勇太

星を見上げる醍醐味は、物理的な距離や時間を超えて、繋がりを感じさせてくれること

―たしかに。その一瞬の行動で自分の中で何かが変わるかもしれませんね。ところで、佐々木さんにとって星を見る醍醐味はなんでしょうか。

佐々木:物理的な距離や時間を超えて、『繋がること』を感じさせてくれるところですね。たとえば、日本では北海道にいても沖縄にいても、ある程度同じ時間帯に夜を迎え、空高く似た位置に同じ星を見ることができます。もしかしたら同じタイミングで同じ星を見上げていることだってあるかもしれません。だとするなら、同じ星が放つ光でその人たちは繋がっているといえるのではないかと思うんです。実際にはお互いそのことに気づいていなかったとしても…。さらに視野を広げて世界に思いを馳せてみれば、日本で星が出ている夜の時間帯(例えば0時)に地球の裏側にあるブラジルは昼間(昼12時)であって、12時間経てばそれが逆転し、今度はブラジルで日本で見えていた星を見ることができます。厳密に言えば、ブラジルは南半球なので日本とは見える星や位置は異なりますが、それでも同じ星を見つけることもできます。要はそれだけ遠く離れた場所でも同じ星を見られる、だとするならやっぱり同じ星で繋がっていて、それは物理的な”距離”を超えられる感じがする、そういうところが素敵だなと思うんです。

―コロナ禍で会いたい人に会いにくくなるという時期を経験したわけですが、離れた場所でも電話などをしながら同じ星空を見上げ、星の話を語り合ってみる。これだけで、なんだか繋がっているような感覚にしてくれますね。

佐々木:本当に、そうですね!現代ではインターネットやSNSのようにリアルタイムで繋がれる様々なツールが発達してきています。それによって同じものを共有することがしやすくなってきていますが、時差はあれど同じものを見て共有するという意味では、星は昔から存在してきた「人と繋がることができるツール」なんだと思います。

さらに星のすごいところは、距離だけでなく時間も超えられるということ。たとえば、2世紀にプトレマイオスという学者が、現代でも語られる基本となる星座を設定しました。そして、それと同じ星座を僕たちは現代の星空の中で見ることができます。つまり、約2000年前の人々と同じ星座を見ているんです。それってとても興味深いことだと思いませんか?

星の命は人間の命よりも遥かに長いので、古代から現代までの数千年という時間は、星や宇宙にとっては一瞬のような出来事といえます。でも、その星たちの寿命の長さのおかげで、僕らにとっては遥か過去や未来と感じるほどの時間が経過しても、同じ星空を古代や未来の人々と共有できるんです。そういった人間の尺度を大きく超えられるのが、星空を見ることの醍醐味かなと思います。

そんな壮大な星ですが、実際は星たちも少しずつ変化していきます。その変化は止まることは一切なく、一瞬一瞬で変化し続けているんです。なので、突き詰めていえば、僕らが見上げる星空もまた、一瞬一瞬違う星空なんです。今日の星空は、今日“しか”見上げられない星空です。

それは人の1日、その人の命とその命が生きる時間も同じことがいえますよね。身体の中の細胞は一瞬一瞬生まれ変わっていくし、心臓も絶え間なく動き続けています。そしてその身体に宿る心もまた、絶え間なく変化していきます。星はそんなことをふと思い出させてくれます。

そしてそれを思い出せたら、改めてその一瞬一瞬を大切にしないといけないな、と思わされてしまいます。「変わらないこと」と「変わり続けていくということ」。相反するものがこんなにも共存するモチーフはなかなかないんじゃないかなと思うんです。

星空とは、自分を導いてくれるもの

―本当に星空は壮大ですね。では最後に。佐々木さんにとって、星空とは何でしょうか?

佐々木:「自分を導いてくれるもの」です。悩んだときや疲れたとき、星空を見上げてぼーっとしていると、だんだんと頭の中が整理されてくるんです。そして、「今度はこういうことを試してみようか」とか「この壁を乗り越えるためにはこういうスキルやツールが必要なんじゃないか」とか、「嫌なことには、こう思えば少し楽に向き合えるんじゃないか」など、人生を生きるヒントとなるようなものをたくさん与え、気づかせてくれるような気がします。

そう思えるのは、たぶん星空が、ただ、そこに存在してくれるだけだからなのかな、と思うんです。星空はわかりやすく何かを言ってくれるわけではないけれど、美しくもささやかに輝く姿で僕らをリラックスさせてくれたうえで、僕らが抱えている想い=心の声を聞いてくれる存在だという気がします。結局は、それが僕たちの中で『自分自身との対話』に繋がっていって、最終的には『自分の中に答えがあること』を気づかせてくれます。

だから星空は『自分のパートナー』とも言えますし、『自分を見守り、導いてくれる存在』だと思います。

流れ星 Photo by佐々木勇太

―なるほど!まさに、佐々木さんの人生は星に導かれているんですね。なんだか素敵です。本日は貴重なお話をありがとうございました!佐々木さんとどこかで星のイベントをやりたいですね。またお会いできるのを楽しみにしています!

<プロフィール紹介>

星空メッセンジャー/旅する星空案内人 佐々木勇太 東京都町田市出身。蟹座。

学生時代に地元のプラネタリウムを見に行ったことをきっかけに、星を見上げるようになる。プラネタリウム解説員を夢みてプラネタリウムメーカーに就職し、映像制作、営業を通じて日本中のプラネタリウムを見て回る。約5年勤務後、周りの解説員との圧倒的差を感じ、対等に渡り合うために『星』をテーマとした世界一周の旅へ。1年5か月43ヶ国145都市を訪問し、世界各地にある天文台やプラネタリウム、星空の美しい場所を巡る。

帰国後は渋谷にあるプラネタリウムで解説員として勤務する傍ら、国内および海外の星空ツアーガイド兼フォトグラファーとして旅を続け、モットーである「いつでもどこでも星を伝えていく」べく世界を渡り歩き続ける。

その他、プラネタリウム映像作品のシナリオ監修、星空イベントのプロデュース(直近は下北沢ムーンアートナイト、渋谷ストリームエクセルホテル東急開業5周年記念企画「Starry Bar~トレント星空バー~」など)、星空写真の提供など、あらゆる「星空の下」で活動中。

夢は、自由に世界各地を旅しながら星を見上げ、多くの人たちに星のすばらしさを伝えていくこと。そしてその人たちをも、プラネタリウムと世界各地の星空を行き来循環させ、繋いでいくこと。好きな天体はオリオン座にまたがる星雲バーナードループ。

Web:http://yuta-sasaki.com/

Twitter,Instagram:barnards_yuta

Share / Subscribe
Facebook Likes
Tweets
Hatena Bookmarks
Pinterest
Pocket
Evernote
Feedly
Send to LINE