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『食で家族を笑顔に』管理栄養士、小野エリカさんが紡いできた”食育”の物語

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『食で家族を笑顔に』管理栄養士、小野エリカさんが紡いできた”食育”の物語

「うちの子は偏食で困る…」「子どもには何を食べさせたらいいのだろ…」「うちの子はきっと栄養足りてないんだろうな…」子育てで必ずと言っていいほど付きまとう悩み。今回は、食に悩んでいる親御さんたちの“救世主”管理栄養士の小野エリカさんにインタビュー。小野さんは、食育を通して家族を幸せに、をモットーに、食にまつわる様々な活動をされています。その中でも注力されているのが、こども食育教室と、農業と食育をかけあわせた小学生向けの習い事。そんな興味深いお仕事をされている小野さんの活動に注目し、食、食育に対する想いや考えをお伺いします。

一番は、楽しいと思ってもらうこと! 食で、子どもたちが自信をつけてもらえたら

―本日はお忙しいところお時間いただきましてありがとうございます。実は、地元のフリーペーパーを拝見して、小野さんのことを知りました。その記事を読んで小野さんご自身のお人柄に一目ぼれしてしまって笑。今回、お話を聞く機会をいただけてとても嬉しいです。本日はどうぞよろしくお願いします。では早速ですが、現在のお仕事についてお聞かせください。

小野さん:そう言っていただきありがとうございます!現在、主な仕事は2つですが、不定期でやっているのも合わせると3つです。1つ目は、子どもたちが住んでいる地域の野菜を使い、調理して美味しく食べてもらう、食育教室”SUN”table。対象は2歳半から小学生までで、こちらは自宅で開催していますが、外部イベントとして実施することもあります。2つ目は、農業と食育を掛け合わせた小学生向けの習い事”はたべる”です。こちらは普段、食卓に並んでいるのが当たり前になっている野菜の生育過程を知り、育つまでの大変さを知った上で調理するところを大事にして開催しています。3つ目が、規格外の野菜販売。こちらは不定期でやっております。ほぼ規格内の野菜しか市場に出回らない現状があるなかで、捨てられてしまう野菜を少しでも救いたいというのと、親子世代に、そういう現実があることを認知してほしいと思い始めた活動です。

―3つともとても興味深いですね!ぜひ、詳しくお聞かせください。まずは、食育教室についてお伺いしますね。最初に、この食育教室”SUN”tableを始めた理由・経緯を教えてください。

小野さん:我が家に小学2年生と幼稚園の年中の娘がいるのですが、長女が幼稚園生のときにとても偏食で、同じものしか食べない子でした。大人と一緒のものを取り分けて新しいものに挑戦してみたりしたのですが、なかなか偏食の壁を乗り越えられませんでした。当時は福井県に住んでいて、そのときに知り合いから、こどもの食育のコツを学んで先生になれる講座があるというのを教えてもらいまして。自分自身、料理が好きですし、管理栄養士の資格も持っていたので、そこを掛け合わせてなにかできないかなと考えたのが始まりでした。学んでいくなかで、娘たちへの声がけの仕方を工夫したり、食に触れる機会を多くしてあげると、今まで悩んでいたのがウソのように偏食がなくなりました。やはり、子どもたち自身が、食に興味をもつことで食べられるようになるんだということが、実体験として分かりました。こういった悩みをもつ親御さんたちは多いのではないかなと思い、食育に力を入れ始めました。それに、家だとお家の人が子どもに教えるのは難しい。やっぱり自分の子どもとなると、イライラしちゃう部分もあると思います。なので、食育教室という習い事として、自宅でやりたいと思いました。

食育教室の様子 ©︎Copyright“SUN”table

―なるほど、子ども自身が食に興味をもってくれるようになるまで、たとえば、どのような過程を経て興味をもつようになるのでしょう?

小野さん:自分たちで野菜を調理することはもちろん、例えば野菜の生育過程を写真などで見せたりもします。枝豆を題材に扱ったときは、枝についた状態の枝豆をもってきて、実際に見せてあげたらみんなとても驚いてくれて。実際に触ってみると、枝豆はこんな風に毛が生えているんだね、と言って興味深く観察してくれたりしました。そして自分で作るとさらに、今まで食べたことなかったけど自分で作ったから食べてみよう、っていう意識になって。お家の方から、これまで食べたことなかった野菜も全部食べちゃいました!っという連絡も結構いただきます。

食育教室 ボードと絵を使って説明 ©︎Copyright“SUN”table

―自分から興味を持つって本当に大事ですね。そんな食育教室で大切にしていることはありますか?

小野さん:一番は、楽しいと思ってもらうこと。このかたちに野菜を切らないとダメ、とか、こう調理しないとダメ、などはほぼ言いません。もちろん、危ないときは注意しますが。基本的に楽しいと思えて、美味しいものが作れた、お家の人に食べてもらって褒められたなど、子どもたちの自信につながるような流れを教室で作れたらなと思っています。そして教室に参加することで、家族の会話のきっかけとなれば嬉しいです。

―興味を持つためには、楽しいと思ってもらうことが大事ですもんね。先ほど外部イベントも実施されているとお話しされていましたが、これまでにどういうイベントに参加されましたか?

小野さん:千葉県我孫子市にある道の駅しょうなんでイベントをしました。そのときは、地元の農家さんのにんじんを使ったにんじんドレッシングやブルーベリーアイスづくりをやりました。昨年のクリスマスは、規格外野菜を使ったミネストローネとクリスマスパン作り教室を開催しました。基本的にはお子さん一人や親子で参加していただくイベントが多いです。

”はたべる”が、自分の居場所になってくれたら

“はたべる”の様子 ©︎Copyright“SUN”table

―とっても大切な食育。もっと多くの人に知っていただきたいですね。

では、次に”はたべる”を始めた理由、経緯もあれば教えてください。

小野さん:柏に来て3年経ちますが、引っ越してきた年に知人から、鹿倉農園というところで収穫体験があるからいってみたら楽しいと思う、というのを教えてもらいまして。その収穫体験に娘と参加したことが非常に興味を持つきっかけになりました。やっぱり、大人も子どもも、土に触れるとすごく生き返る感じがします。自分もそうですが、子どもたちの生き生きした姿をみて、普段住んでいる場所と違い、自然豊かなところにいるだけでとても良い経験なのだなと感じました。この体験が、まず農業に興味をもったきっかけです。そのあとに、鹿倉農園さんがやっている援農ボランティアに、昨年の7月頃から行き始めました。これは、普段やられている農作業の一部を手伝わせていただくのですが、多いときは週に1回は通っていました。一緒に作業している中で、当たり前のように食べている野菜がこんなに手間暇をかけて育てられているんだというのを実感して。私が体験したのはほんの一部ではあるのですが、収穫だけではなく育てる過程も、こどもたちに知ってもらいたいなと思いました。そこを知ることで、より、食べ物の有難さが分かるんじゃないかって。

自分のこどもに一から畑を作って教えるのはとても難しいので、農家さんに協力していただいて、今年の4月から習い事としてスタートさせました。そしてもう一つ、はたべるが担いたいと思っている役割が、自分の居場所作りです。昔と違って今は核家族なので、家族内だけでこどもを育てる側面が強いですよね。でも、親になかなか話しずらい悩みって誰しも一度は抱えることがあると思いますが、そんなとき、友だち感覚で話せる居場所として”はたべる”があったらいいなと思っています。一回だけの農業体験ではなくて、習い事として年間通して何回も来るからこそできることだと思います。本当は平日も開催して、放課後集まる場所として担えたらなと思っていますが。そういった部分で、“地域で子どもを育てる”に一役買えたらいいですね。来てくれる子どもたちも、身体を動かしてリフレッシュできる。かつ、色々な友だち、仲間、大人たちと接する機会も得られる。そんな場所になればと思います。

“はたべる“収穫しているときの様子 ©︎Copyright“SUN”table

―いろんな人たちと接して、いろんな体験ができて、自然と触れ合える。とっても素敵な習い事ですね。今はゲームばっかりで家に引きこもりになっちゃう子も多いですしね。

小野さん:そうですね。それに今、共働きが多いので、ちょっと話したいときに話せる大人が、頭の片隅にでもいると安心できると思います。”はたべる”が、そういう関係になったらいいなと思っています。

―そうですね。何かあったときに、人に話せるって、とても重要なことだし、勇気のいること。気軽に話せる関係があることは親にとっても心強いですね。

幼い頃から食べることが大好き。食以外は興味を持てなかった

-食育教室の”SUN”tableと”はたべる”を通して、今後やっていきたいことや目指したいことはありますでしょうか?

小野さん:”SUN”tableに関しては、現状維持ですかね。生徒さんの数としてはもう少し増やしてもいいですが、割と来てくださっているので、このまま楽しいと思ってもらえるように、飽きないメニューを考えながら続けていきたいと思います。あとは、外部イベントをやりたいですね。自宅だと通ってもらえる距離に限りがあり、通いずらいという方もいるので、様々なところで地域の野菜を使った料理イベントを開催したいです。”はたべる”は、もう少し認知活動に力を入れていきたいです。生徒数もまだ少なく、参加してくださる仲間が増えると子どもたち自身もよりわいわい楽しくできると思うので、もっと多くの子に知ってもらいたいなと思っています。

“はたべる”のゆかいな仲間たち ©︎Copyright“SUN”table

ー小野さんは管理栄養士の資格を取られていますが、そもそも食に興味を持ったきっかけは何でしょうか?

小野さん:そもそも小さい頃から食べることが好きでした。それと、幼稚園生の頃から母の料理のお手伝いをしていました。ニンジンの皮むきなどの簡単な作業で、ただそのときはやらされているという感覚でしたが(笑)。それと、母が季節に合わせて行事食みたいなものを作っていて、それもお手伝いしていました。幼い頃から食が身近にあったこともあり、自然と料理が好きになりました。今振り返ると、食を仕事にしたいと思えたのは、母が幼いころから色々と気を付けてくれていたところが大きいなと思います。

ただ、小さいころからお手伝いをさせるというのはなかなか難しいですよね。でもお手伝いを無理にさせなくても、豪華な行事食を作らなくても、お話しをするだけでもいいと思います。たとえば、今日はお月見でこういうのを食べる習慣があるんだよ、とか。でも、今は幼稚園でそういうことをやってくれたり、給食に力をいれてくれたりするので、有難いですよね。

―小さいころからのお手伝いって、やはり大きくなってからも影響するのですね。幼い頃の習慣って大事だなぁと改めて思います。小野さんは、幼いころから食べることがお好きだったとのことですが、高校や大学を経て大人になっても、食に飽きることなく興味を持ち続けられたのでしょうか?

小野さん:そうですね。あとは、それ以外興味を持てなかったのも大きいです。それと、自分が作ったものを美味しいと食べてくれる人がいるとすごく嬉しい。そういった、食に対しての楽しさ、嬉しさという感情を持ち続けられたのもあると思います。

―1つのことに対して興味を持ち続けるって、なかなか難しいことではあると思うので、とても尊敬します!ところで、農業に興味を持たれたきっかけは、先ほどのお話しにもありました、収穫体験でしょうか?それも規格外の野菜販売にも繋がりますか?

小野さん:そうですね。今でも鮮明に覚えていますが、大根収穫の時期にお手伝いさせていただいたときがありまして。そのときは、何百本もの大根を収穫し、それらを洗いながら仕分けます。土がついた状態だと一見分かりませんが、洗ってみると少し割れていたり二股になっていたりするのがあって、それは全部はじいていきました。その時は出荷できず廃棄になるものが3分の1にものぼりました。美味しく食べられるはずの大根が、トラック山積みの状態で廃棄されていく現実を目の当たりにして、とても衝撃で。なんとか廃棄しない道はないのかと思ったのが、規格外野菜の販売を考え始めたきっかけです。販売をすれば、規格外野菜というのがあると知ってもらえますし、少しでも、農家さんの収入につながればいいなと思い始めた活動ですね。

規格外野菜の無人販売@幼稚園にて ©︎Copyright“SUN”table

人生のターニングポイントは、3年前。がむしゃらに働きだした

―これまでの人生で転機となることはありましたか?

小野さん:3年前に、父かコロナで亡くなってしまったことですかね。それまでは子どもが小さかったこともあったのですが、結婚してからはずっと主婦で仕事せず子育てに専念していました。それで、大好きな父が亡くなってしまって、絶望を感じでいたんだと思います。管理栄養士の夢など、小さいころから自分のやりたいことをすごく応援してくれていたので、その父がいなくなってしまい、その悲しみを忘れるためにがむしゃらに働きだしました。父に恥ずかしい姿を見せないように、頑張っている姿を見せられるように、無我夢中で働いて。そのときに自分の中で人脈がすごく広がり、色々なことをスタートさせました。そこが、人生でのターニングポイントだと思っています。

―そうなんですね。働くことで、生活環境も変わるし、意識も変わり、良い刺激にもなることもありますもんね。そこでもお仕事内容は食関係でしたでしょうか?

小野さん:そのときも様々な地域活動をしていましたが、基本は食ですね。食以外のことをあまりやっていないですね。

―首尾一貫していてすごいですね!これまでのお話しを聞いていて、小野さんが大事にしているキーワードは、食、地域、コミュニティづくり、のように感じました。

小野さん:そうですね。全国各地、色々なところで美味しいものがあると思いますが、自分が住んでいるところの食べ物や生産者を知ることで、自分が住んでいる地域に誇りをもってほしいと思います。こんな美味しい食べ物がある場所なんだ、っていうのを知ってほしいと思います。3年前に柏市に引っ越してきましたが、自分自身、柏はまったくゆかりがない土地でしたが、最初に越してきたときにご近所さんにゆでた落花生をいただいて。初めて食べたのですが、衝撃的な美味しさでした。自分が住んでいる街にも、こんな美味しいものがあるんだととても嬉しく思いました。そういうふうに食べ物が、住んでいる街を好きになるきっかけとなればいいなと思っています。

ちなみにゆで落花生は、乾いたピーナッツとはまた別物で、とっても美味しい。好き好きはあると思うのですが、好きな人は割と多いと思います。

―ゆで落花生、私も食べてみたいです!

食育を通して、笑顔になる家族が増えたら

ー小野さんは、食を通して、今後やりたいことや挑戦してみたことはありますか?

小野さん:今は食育教室で教えるのがメインですが、今後、地域の食材を美味しく食べられるレシピ監修をお仕事としてやってみたいです。あとは、規格外野菜の無人販売も力を入れてやっていきたいと思います。そのメリットとしては、規格外の野菜を知ってもらう方が増えるし、規格外で捨てる野菜が減っていくという循環が生まれます。行く行くは、色々な農家さんのところを回って、移動販売をできたらいいなと思っています。

―移動販売、楽しそうですね!食育の活動を通して大切にしていることはありますか?

小野さん:教室のコンセプトが『家族の笑顔を食から』なので、子どもたちが笑顔になるだけではなく、お家の人に褒められてもらえたり、食をきっかけに家庭内で会話が増えたり、家族が幸せになれるきっかけづくりをしていきたいという想いが根本にあるので、そこは大事にしていきたいと思っています。

―食で家族が幸せに。本当に、食にはその力が宿っていると思います。そんな小野さんにとって食育とはなんでしょうか?

小野さん:食って生きるための源。それを多くの人にお伝えしていくことですかね。そして、食育を通して、笑顔になる家庭を増やしていきたいと思っています。

―食育に困っているママは多いはず。小野さんの活動をできるだけ多くの人に伝えていきたいと思います。本日はお忙しい中ありがとうございました!

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