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70年以上続く武田農園。地域の人たちから愛され続けるその秘訣とは?

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70年以上続く武田農園。地域の人たちから愛され続けるその秘訣とは?

まさお君。インスタグラムでそう呼ばれている武田農園のキャラクター!?のような存在のその方は、農家歴50年以上、現在79歳の現役農家の武田正雄さん(以下、まさおさん)。まさおさんは、武田農園の2代目で、そこは千葉県松戸市五香地区の一角に広がる、70年以上の歴史がある農園です。

農家として美味しいお野菜を届けるのはもちろんのこと、それ以外の地域の活動でも貢献されている武田農園さんは、地域の方々にとても愛されています。今回は、そんな武田農園さんに取材に伺いました。

インスタグラムでは、収穫の様子や、収穫された新鮮なお野菜が並ぶ直売所の様子、お野菜の豆知識などを楽しく伝えていたり、採れたてのお野菜を使った“農家メシ”や”今日のまさおくん”などの面白いコンテンツも投稿されています。時代の流れに沿って、その時々の環境に合わせて変化し、地域の皆さんに愛されてきた武田農園さん。その中心を担ってきたまさおさんとは、どのような方なのでしょうか。まさおさんが紡いできた物語を探っていきます。

武田正雄さん

武田農園の始まりは、77年前

―本日はお忙しいところお時間いただきましてありがとうございます。いつもインスタを楽しく拝見しています。今回、武田農園さんに取材できてとても嬉しいです!どうぞよろしくお願いします。では早速ですが、現在のお仕事についてお聞かせください。

まさおさん:現在は、60種程の野菜を作っており、娘たちと直売所も始めております。当初は半年間、無人販売で野菜の100円均一をやっていたのですが、お金が1円玉しか入っていないとか、夏は暑くて野菜を置けないなど、様々な問題がありました。それで無人販売を続けるのをやめて、今の直売所を始めました。ちょうど2024年3月で丸一年です。今は市場に出すのはやめて、直売所だけでやっています。

武田農園 直売所

―そうなんですね。ちょうどこの間、インスタグラムで直売所の1周年記念をやられているのを拝見しました。多くのお客さんがいらしていて、武田農園さんが地域の皆さんから愛されているのが伝わってきました。
ところで、武田農園が誕生したのはいつでしょうか?

まさおさん:農家は77年前、初代の親たちが始めました。昔は、この松戸市五香の地は麦畑ばかりでしたが、当時は新たにと里芋やごぼうなどを栽培していました。やり始めて10年くらい経ち、段々と周りの様子が変化し、大根作りが流行り出しました。それから2代目の私は大根とネギを栽培し、収穫時期は200個ほどの大根を箱に積んで市場へ出荷しておりました。50年近く続けていましたが、今は79歳と高齢になり、重たい大根は大変なので、一昨年専門農家を引退しました。そして、現在の形の直売所を3代目の娘たちとやっております。

―77年間も農家を続けているとは、歴史ある農家さんなのですね。そんな武田家の農家はどのように始まったのでしょうか。

まさおさん:昔は武田家の本家の農家が、この辺では一番大きい農家だったようです。その頃はこのあたり一帯は麦畑だったこともあり、麦の会という集まりもありました。そんな中で本家では、さつまいもなどを作ったりして松戸の市場に出荷していたようです。うちは、本家からの分家としてここの土地をいただき、畑をやろうということになりました。

畑の様子

―まさおさんが継いだ理由は何でしょうか?

まさおさん:私は当時、兄と自動車の整備工場をやっており、そこで働きながらガソリンも販売していました。ただ、兄弟二人で自動車整備工場をやるよりも、二人違う道で仕事をした方がいいという事を親に言われ、自分が婿入りし、当初お給料も良かった農家の道に進みました。

―まさおさんご自身は、農家はやりたくないとかそういう気持ちはなかったのでしょうか?

まさおさん:私の実家も農家だったので、全く苦にはなりませんでした。白井市にあり、主に梨を栽培しておりましたが、田んぼや畑、何でもある農家でした。

―そうなんですね。婿入りされたのは何歳の頃でしょうか?

まさおさん:27歳のときに結婚しました。その後3年ほどは兄の自動車整備工場に勤めていましたが、そこを辞めて、この五香地区で若い人たちが集まる農研に入らしてもらいました。その他に消防団にもはいったりして、この地区のことを知っていきました。これまで地域の活動にはたくさん出ています。

とにかく、自分の代で農業を終わらせたくない

―今後、武田農園をどのようにしていきたいでしょうか?

まさおん:生涯現役農家としてやっていきたいという想いもありつつ、でも娘たちに負担もかけたくないと思い、将来を考えたときに選んだのが果樹園です。旅行が一つの楽しみなのですが、妻と九州に行ったときに、美味しいスイートスプリングというみかんに出会いました。それがきっかけで、今後は果樹園としてやっていきたいと思いました。それともう一つ何かと思っていますが、そこは考え中です。

今、スイートスプリングを植えて4年経ちますが、九州の方の品種なので、松戸市で売り出したのは初めてだと思っています。皮が少し硬いく、とても甘くて美味しいです。

果樹園としては、スイートスプリング、デコポン、はるか、レモン、はるみなどをやっていきたいですね。どれも南の温かい地域のものですが、松戸市で採れたものとして、松戸市のみなさま、そして他の地域の皆さまにこの美味しさを広めていければと思っています。

―果樹園いいですね、とっても楽しみです!ところで、どうしてみかんを選んだのでしょうか?

まさおさん:みかんは、鳥の被害や災害にも強いので育てやすいです。妻と伊豆を旅したときに、気に入ったものがあったらその苗木を買ってきたりもしました。思い出が詰まった品種ばかりですね。

一方でレモンにも挑戦していますが、こちらは4年前3000㎡の畑に苗木を植え、1年目のときに寒さでレモンが枯れてしまったということもありました。ただ、試行錯誤しながら今は順調に育っております。

とにかく自分の代で農業を終わらせたくないと思っています。その先もなお、続いてくれると嬉しいですね。なので、農業を残していくために、割とこの地で育てやすい果樹をやっていきたいと思いました。

今後も、農業に限らず、地域のために活動していきたい

―今後、挑戦されたいことはありますか?

まさおさん:松戸を良くするために、活性化するために、これからも地域に貢献していきたいです。これまで農業委員会を9年務めたりしていました。また現在は、防災リーダーや松戸市社会福祉協議会の”にこにこクラブ”ボランティアを務めています。ともに30年になりますね。加えて、高木第二小学校の麦の会の指導委員としても13年務めています。これまで色々なことをやっていて毎日忙しくしていましたね。ちょっと前まで休む暇もなかったです。特に大変だったのが、町会長でした。1700世帯の、この辺りでは一番大きな町会だったので余計に大変でしたね。

でも、色々やりながら地域の様々な人と関わって、協力しながら地域を良くしていく活動はやりがいがあります。今後も続けてやっていきたいなと思っています。

―武田農園さんが地域の方々に愛されるのは、そのようなまさおさんの人望があったからですね。
農業をされていて嬉しかったこと、良かったことなどあればお聞かせください。

まさおさん:やはり、作物が良くできたときは嬉しいです。上手くいかないときもありますが、夫婦で知恵を出し合い、試行錯誤しながら育てたものが美味しくできると、とても達成感があります。それと、今までは市場への出荷のみでしたので、直売所で自分が作った野菜を買うためにお客さんがたくさん並んでいるのを見ると嬉しいです。直売所の1周年記念をやったときに、朝からお客さんが30人くらいも並んでくださるのを見て、びっくりしました。ここにお客さんが来るなんて、直売所をやるまで考えもしなかったですね。やっぱり、地元の人に愛されているんだなって思いました。

―実際にお客さんの喜んでいる顔をみると嬉しいですよね。やはりそういうときはやりがいを感じますか?

まさおさん:そうですね。やはり、お客さんの生の声が聞けるのはいいですね。有難いとか美味しかったなど言ってくださると、美味しいものを頑張って作ってよかったと、やりがいを感じます。これまでは市場出しのみでしたので、黙々と作業していましたから、今はよい刺激です。

地域の人たちのためにも、娘たちのためにも、現役農家であり続けたい

―農作業をやっている中でこれまで印象に残っていることはありますか?

まさおさん:目の前の小学校で麦や米を育てるボランティアをやっているのですが、そのお礼として、収穫した麦や米で、すいとんやおにぎりを振舞ってもらったときはとても嬉しくて。さらにその後、生徒さんから心温まるお手紙を一人一人から頂いたのには感動しましたね。とても印象に残っています。

このような温かいおもてなしをしていただけるのは、これまでの地域活動で築かってきた信頼関係だと思います。みんなのために尽力をつくしてくれた武田さんのためにって。

―これまでの積み重ねなんですね。素敵です。
ところで、農作業は体力的に大変だと思うのですが、それでもやり続けようと思う、モチベーションを高めるものは何ですか?

まさおさん:体力的にきつくなってきたとのことで農家を辞めた友人も多くいます。私も現在は79歳で、数えで傘寿です。大変な農作業は痛いところだらけで身体に堪えますが、それでも続けようとするのは、直売所に来て喜んで帰ってくれる地域の人々のため、そして何より、一緒に頑張ってくれる娘たちのためです。そして、娘たちがこういう直売所をやってくれるというのなら、もう少し頑張りたいと思います。

―まさおさんは、若いころから地域の人のために、と地域活動に関わってこられてきました。ずっと変わらず、今も、そしてこれからも、地域のみなさんのために活動されるんですね。そんなとても頑張り屋のまさおさん、毎日の習慣などありますか?

まさおさん:当たり前かもしれませんが、毎日畑に行く事です。もちろん、体力的にはキツイですが、畑に行かないと気が済まない性分です(笑)。ちなみに、少し前までは腹筋もやっていました!

これは、毎日の習慣ではないですが、若い時は家族でたくさん旅行に行きました。海外も、国内も。海外は、カナダやアメリカ、ニュージーランド、シンガポール、ロシアなど、片手では数えきれません。そういえば若い頃、農業のネギ栽培の視察で中国の農村にも5回ほど行きました。その頃、中国からネギがたくさん入ってきて。

―すごい活動的なんですね!農業は、そのように海外に出向いたりして勉強していかれたのでしょうか?

まさおさん:農協に指導課がありました。その時代は農家の盛りで、若い人たちがたくさん集まり、皆で農業の勉強をしていました。松戸市や千葉市で品評会もあり、賞もたくさんいただきました。家に表彰状がずらっと並んでいます。当時はそれが励みになってましたね。今は時代が変わりました。松戸も、畑があった場所はお店になり、農家の土地ではなくなってしまいました。

―そうなんですね。少し寂しい気持ちもきっとありますよね。でも今は、その時代の流れに沿って、直売所やインスタグラムも充実されていますね。そのインスタで拝見したのですが、娘さんが作ってらっしゃるお料理は豪華でとても美味しそうです。

まさおさん:娘の料理はとっても美味しいです。最初は、家族の誕生日会で豪快にふるまってくれました。年々進化していきますね。うちの野菜で美味しいご飯が食べれられるのは嬉しいですね。

―武田農園さんの、そんな仲睦まじい家族の姿を、いつまでも見ていたいですね。本日は、お忙しいところお時間ありがとうございました!

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