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「やっぱり。ずっと好きだった宇宙を仕事にしたかった。」文系でも宇宙を仕事にできることを証明。ー宇宙業界の第一線で活躍する、広報担当者の物語

「宇宙は夢の話」こんなレッテルは取り払い、「宇宙は当たり前」の社会を作っていきたい。そのように話すのは、さくらインターネット株式会社で日本発の衛星データプラットフォーム「Tellus」のプロジェクトメンバーとして働く傍ら、複数のメンバーとともに宇宙産業の人材の課題解決を目指す会社「sorano me」を立ち上げ、宇宙ビジネスの拡大に尽力している菅谷智洋さんです。
文系出身で、大学卒業後も宇宙とは全く関係のない仕事をされてきた菅谷さんが、今は宇宙ビジネスを促進する広報を担っています。ここまで到達するのに、どのようなルーツを辿ってきたのか。宇宙に興味を持ったきっかけから、今に至るまで、そして今後のことなど、菅谷さんが紡いできた物語を伺います。

菅谷智洋さん

子どもの頃に見たプラネタリウムが、宇宙への興味を誘う

―本日は取材のお時間いただき誠にありがとうございます。今のお仕事にも直結している宇宙ですが、これに興味を持ったきっかけは何でしょうか?また、いつ頃から興味を持ったのでしょうか?

菅谷さん:宇宙は子どものときから好きでした。特に印象に残っているのは、小さいころよく見たプラネタリウムですね。母親が書道の先生をやっていて、結構頻繁に書道の先生方が集まる会というのが開かれていました。場所が地元の総合市民会館みたいなところで、そこにプラネタリウムがありました。もう30年くらい前ですが、そこの市民会館はコンクリートでできていて、モダンな感じで。子どもからみたらちょっとかっこいい建物。そこに連れていかれるたびに、プラネタリウムに行きたい!と言って季節の星座の解説などを聞いていたのを覚えています。
それと、父親も宇宙が好きで。ニュートンという雑誌を定期購読していました。その雑誌を子どものころ勝手に見ていて、雑誌に掲載されている綺麗な銀河の写真や星雲などにくぎ付けでした。内容よりかは、宇宙の綺麗な写真に興味がありましたね。
こんな感じで、小さいころからプラネタリウムを見たり、ニュートンを見たりしていたので、小学校や中学校の理科に出てくる程度の宇宙の知識は、あえて勉強しなくても既に身についていました(笑)。

―すごいですね。その宇宙への興味は、社会人になるまでずっと続いていたのでしょうか。それとも、仕事をするようになってからまた興味がわいたのでしょうか。

菅谷さん:そうですね。学生のときも漠然と宇宙は好きでしたが、高校の数学や物理でつまずいてしまったのと、特に理系の仕事や宇宙の仕事をしたいっていう考えはその時はなくて、目指すほどではなかったです。
ただ明確な将来の目標もなかったので、大学で面白いと思えるものを探そうと思いました。それで、一番学べる範囲が広くて色々なことを知ることができそうな社会学部に入りました。なので宇宙とは全く関係がない道に進んでいます笑。
大学では、アートサークルに入ったんですが、サークル活動を通して写真に興味を持ち始めました。デジカメを購入して使い方なども勉強して、サークルの展示会に出すために作品を作ったりもしていましたね。
大学では、こういう作品作りにも紐づいて、何かを表現して伝えるということに興味を持ち、社会学部では広告についても学べる機会もたくさんあったので、そういう仕事に就こうと思って広告業界をメインに就活していました。大学のときも、宇宙は好きは好きでしたが、仕事としてはこの時も全然考えてなかったです。

一生続けていきたい仕事は何か。大震災をきっかけに考え始めた20代

―なぜ、天文・宇宙を仕事にしたいと思ったのでしょうか?現在の仕事に至るまでの経緯についてお聞かせください。

菅谷さん:新卒で入った最初の会社は、ディップ株式会社というバイトルドッドコムで有名な求人広告の会社です。様々な店舗や企業が人材を募集するための広告を提供する会社でした。新卒で入った年の後半くらいから、画像を作ったり求人原稿を作ったりと広告制作を担当する部署に配属されました。当時はただひたすら日々の目の前の仕事を頑張るって感じでしたね。そのあと、ちょうど10年前の東北の震災があった3月に、広告制作本部から広告審査室という別の部署に異動になりました。

広告審査の仕事は、規定を守れているか、広告掲載を許可してもよいかを判別するという、今までの広告を作る仕事とは全く違う仕事で、しばらくやってきて慣れてきた仕事が変わってしまったことによる戸惑いがありましたね。
また、その当時発生した震災のこともあり、自分ではどうしようもないことが起こるんだっていうことが分かって、自分の人生を考えるきっかけにもなりました。これから何十年も続けていく仕事。今の仕事をずっとやってくのはどうなのだろうと色々と考えるようになりましたね。
自分の趣味は何だろうとか、本当にやりたいことって何なのだろうって。そんなとき、自分探しの旅ではないですが、一人でどこかに行こう!って衝動にかられまして、ゴールデンウイーク中に一泊二日で旅行に行くことにしました。もっと行動力がある人だったら、海外に1週間とか行ってしまうんでしょうけど、特に行きたい場所もなかったので、自分の苗字の地名があるところにしたんです笑。
それで”菅谷”っていう土地を調べたら、福島県田村市にあることを発見して、そこに決めました。その街の近くに、あぶくま洞という有名な鍾乳洞があることを知って、まずはそこに見に行くことにしました。ただ、行ったのがゴールデンウイークだったこともあり、家族連れがたくさんいて。20代半ばの男性が一人で行くのは場違いな気がしてしまい、ささっと見学を終えて外に出たら、目の前に星の村天文台という天文台を見つけ思わず行ってしまいました。そこで星空の解説を聞いたり、売店で宇宙グッズを見たりしていたら、やっぱり自分って宇宙が好きだったんだなぁと感じるものがあって。それで帰りの電車の中で、せっかくの人生、もうちょっと宇宙を楽しまないともったいないなと思い、すぐあとに星を見るための双眼鏡を買ってました笑。

宇宙が好きだと気付いた時以来、数年後に再び訪れた星の村天文台と北斗七星
© Tomohiro Sugaya

―そうだったんですね。星の村天文台は私も行ったことがありますが、とてもいいところですよね。
それから、仕事も変わっていったんですか。

菅谷さん:そうですね。一生続けていきたいと思う仕事を考えたら、新しいことをまた考えるっていうよりかは、今までずっと好きだったものにしようと。なので、宇宙に関われる仕事を探し始めましたが、文系出身ですし、すぐに働けるあてもなかったので、まずはできそうなことから始めようと思い、日本科学未来館(以下、未来館)のボランティアを始めました。そこでのボランティアもとても貴重な経験でした。それまでは友達の中でも一番宇宙に詳しかったのは僕でした。僕が夜に見える星座のこととか教える立場でしたが、いざ未来館のボランティアを始めたら、僕より詳しい人がたくさんいて。同じくらい宇宙大好きな人達がたくさんいて。さらに宇宙だけではなくて、深海も面白いよとか別の分野のことも教えてくれる人たちもいて。そういう好奇心を持っている人たちの集団でした。そこで出会った人たちと、自分たちの知識を活かしたイベントを企画したり、一緒にJAXAのイベントに行ったりとか、遊びながら色々なことを学ばせてもらいまして。そこで今まで以上に宇宙に関する知識が広がりました。

やっぱり、宇宙が好き。ボランティア活動からJAXAへ転職。

―そうなんですね。ここから、宇宙業界への転職がスタートしたのですね。

菅谷さん:はい。未来館のボランティアをしていたときに、同時に”宇宙少年団”という、子供たちに宇宙を通していろんな体験を行う団体があったのですが、そこでも活動をしていました。その中で、自分たちでイベントを企画したり、子どもたちに何か教えたりっていうことをしていたら、こんな風にやってきた経験って仕事にも活かせるんじゃないかなと思えるようになってきて。そんなときちょうど、JAXAのツイッターで、人工衛星の広報担当者募集という情報が出てきて。広報だったら、今までの経験を活かるんじゃないかと思いました。これが、JAXAに転職しようと思ったきっかけです。
 無事転職できたのも、宇宙少年団のご縁があったからかもしれないエピソードがあって。ちょうど面接官が、僕が所属していた宇宙少年団の団長さんの知り合いの方で、その方が宇宙少年団の中でも有名な”宇宙おじさん”と言われるような方でした。面接時にはそんなことは知らず、後々聞いた話ですけど、その面接官の宇宙おじさんから団長さんに連絡があって、僕のことを聞いたみたいです。いちおう宇宙少年団ではまじめに活動していたと思うので、いい感じに言ってくれたんだと思います笑。

―すごいご縁ですね。でもきっと、それまで活動していた実績があったからこそ、自分でつかみ取った仕事ですね。
それ以降も、宇宙関係の仕事に就かれたんですよね。

菅谷さん:そうですね、JAXAでは、JAXAが開発する人工衛星を知ってもらうイベントなどを企画して広報する仕事をしていたのですが、3~4年の任期付きの仕事だったこともあり、その後は、未来館のボランティア時代からの友人のご縁で、天体望遠鏡メーカーのビクセンに就職しました。実はそれと同時に、他にも宇宙関係の活動はしていました。これが後々に今の仕事にも繋がるんですが、宙畑(ソラバタケ)という宇宙ビジネスメディアでした。このメディアは、宇宙広報団体TELSTARという学生団体の創設者がTELSTARを引退した後に立ち上げたもので、僕は宙畑の立ち上げ当初から関わらせていただきました。就職したメーカーで働きつつも、宙畑の記事を一緒に考えながら、宇宙を盛り上げるための情報発信をしていました。
そんなことをやっていたら、経済産業省が、衛星データをより多くの人がビジネスでも利用できるような環境を整備していくという事業をスタートさせることを発表しました。その事業を受託したさくらインターネットの方が、宙畑を見つけてくれて、この事業に参加しませんか、と宙畑のメンバーに声をかけてくれました。それで、まさに、JAXAでやってきたことも活かせるなと思い、数人のメンバーとともにこのプロジェクトに参加することにしました。

宇宙産業を盛り上げていきたい。業界に眠る課題解決のために「sorano me」を設立

―そうだんたんですね。では、衛星データに関する事業の内容についてと、sorano me(ソラノメ)という会社を立ち上げた経緯を教えてください。

菅谷さん:現在、本業でやっているのは、経済産業省がデータセンター事業を展開するさくらインターネットに委託した、人工衛星データのビジネス利用を促進するプラットフォーム「Tellus」の事業のPR担当としてイベントやセミナーなどを企画・運営し、衛星データを利用する機会を増やすための活動をしています。たとえば、外部の有識者に登壇してもらう、トークセッションイベントを開催したり、衛星データの使い方を学べるようなセミナーを開催したりとかです。
この本業のTellusの事業では、衛星データビジネスを盛り上げていくということには関われていますが、宇宙分野って衛星データだけではなく、宇宙飛行士の話だったり、ロケットの話だったりとたくさんある。だから、宇宙産業全体がもっと拡大していくために、Tellus事業だけではなく、もっと色々なことをやっていきたい。宙畑を立ち上げたメンバーも同じようなことを思っていました。そこで、衛星データを超えて、Tellusの仕事だけではアプローチできないこともできるようにしようと、別会社を立ち上げたのですが、それが「sorano me」という会社です。
sorano meでは、”人材“に着目しています。宇宙の仕事をしていると、「すごいですね」とか、「夢がありますね」とよく言われるのですが、その言葉の裏には、自分には宇宙を仕事にするのは無理だけど、ロマンがある仕事、自分とは遠い世界のこと、というレッテルを貼られてしまっている感じがします。本当は、そんなことはない。文系出身の僕が宇宙関係の仕事をやれているように、誰でも関われるものなんです。宇宙産業に参入している企業には、人をもっと増やしたいとか、いい人材がほしいとか、そういった需要はたくさんある。一方で、宇宙関係の仕事をやってみたいけれどどうしたらいいか分からないとか、自分にできるかどうかわからないと思っている方もたくさんいる。そういった要望に合わせて、企業にも個人にもアドバイスできるように、宇宙系の企業の方に、どういう人材がほしいのかを聞きに行き、宇宙を盛り上げるための人を育てるためにはどのようなものを考えればいいのか、sorano meでは、そういった人の課題を解決していきたいと思っています。

―宇宙ビジネスを広げていくために、様々な活動をされていると思いますが、その中で苦労したことがあればお聞かせください。またそれをどのように乗り越えていったのかも合わせて教えていただけると幸いです。

菅谷さん:ボランティアをしている時から苦労というか、難しいなと思うことはあって。”宇宙は遠い存在”というレッテルがあるということをお話ししましたが、これはビジネス界でも存在します。宇宙をテーマに何か企画を提案しても、面白そうだけど、ビジネスで考えるとうちとは関係ないよね、って思われてしまうことが結構あります。衛星データを使ってみましょうという提案をしても、うちの事業とは全く関係ないと思われてしまい、そもそも壁を作られてしまうことが多いんです。そんなことはないのに、衛星データはいろいろな分野で使えるんだということを納得してもらうのは結構ハードルがあるなと感じています。そこをどう乗り越えていけばよいのか。相手の立場や相手のメリットみたいなのをよく考えながら話さないといけないなと思っています。だから、衛星データってとても面白い、って気づいてもらえると、こちらも嬉しい。衛星利用の拡大に一歩近づいた気がしてやりがいを感じます。

今後は、衛星データのビジネス利用拡大。そして、人材の育成や流動に力を入れていきたい。

―今後、Tellusやsorano meでやりたいこと、挑戦したいことはありますでしょうか?

菅谷さん:Tellusは今、経済産業省からの委託事業としては3年目で、今後は民営化される予定です。そうなったときに、民間でもしっかりと事業を行っていけるよう、ビジネスとして成立させていかないといけません。衛星データが業界を超えて産業に貢献できるかどうか、成功するかどうかはこれからにかかっています。今後はより一層、様々な利用者の視点に立ち、衛星データの利用の有効性をアピールしていかないといけません。

並行してsorano meでは、宇宙ビジネスをやろうとしている企業が、しっかり宇宙産業に参入していけるよう、人の課題を解決していきたいと思います。人材がほしいと思っている企業に、要望に合った人材を紹介できるように、宇宙の仕事に就きたいと思っている人たちがちゃんと宇宙の仕事ができるように。会社同士のつながりや、人と人とのつながりを大事に、人材の育成や流動をスムーズにできるような仕事をできたらいいなと思っています。

―なるほど。sorano meの情報を知っていれば課題がすぐに解決できてしまう仕組みを作れるといいですね。具体的には、どのようなアクションをとっていきたいでしょうか。

菅谷さん:今sorano meで考えているのは、宇宙という軸で、自分はこういうことができますっていう人たちを集めて、その人たちでプロジェクトを回してみて、企業の課題を解決できたりするような組織を作っていきたいと思っています。たとえば、ロケットの打上げに関わったことがありますとか、衛星データを解析できますとか、イベント運営できますとか、デザインできますとか、星の話をできますとか、宇宙と関わるなかで様々なスキルを発揮できる人たちはたくさんいると思っていて。そういう様々な人が集まっていると、その中でもこれやってみようよ、という話で盛り上がってコミュニティができます。そういった人材を集めて、複数のプロジェクトを回していけるような事業をしていきたいですね。

―いいですね。一方で、Tellusはこれからが本番というところで、衛星を色々な会社に使ってもらうようにするために、具体的な策などはお考えでしょうか。

菅谷さん:一つは、衛星データを使ってどんなことができるのかっていうトークイベントやセミナーを今後もやって情報発信をしていく。そしてもう一つ、発信していく中でつながった様々な企業や組織が、何に悩んでいて、その課題をTellusをつかって解決できるのか、というのを聞いて、その上でこちらでできることを提案していけるようになればいいなと思います。

宇宙ビジネス業界の行方

―これからの宇宙ビジネス業界はどのような方向に進んでいくでしょうか。またどのようにしていきたいとお考えでしょうか。

菅谷さん:宇宙ビジネスは今後も盛り上がっていくと思います。政府としても、2030年までに宇宙産業の市場規模を2倍にするという目標を出しています。それに向けて、様々な会社や政府が力をいれているので、数年はバブルと言える状態なのではないでしょうか。市場を拡大していく役割の一つとして、本業のTellusをしっかりと取り組んでいかないといけない。逆に、衛星データの利用拡大のプロジェクトが失敗したとき、思ったよりあまり伸びなかったということになったとき、日本の宇宙産業もまさにバブルが弾けるように盛り下がっていくことになる。とても残念な感じになってしまう。だから、そうならないように、宇宙は夢、ではなく、宇宙は当たり前に、日常的に関わっているよねという世界にしたいです。ビジネスをやっていく中で、衛星データを使うのは当たり前になっていてほしい。そういう社会にしてきたいとずっと思っています。当たり前になると、宇宙ビジネスという言葉もなくなるかもしれない。そういった社会が理想。僕たちが目指しているところです。

星を撮るのが好き。写真には、肉眼では見られない不思議な景色が広がる。

ー星空の楽しみ方などをお聞きしたいのですが、まず、これまで訪れた中でおススメの、印象に残っている場所はありますでしょうか?

菅谷さん:群馬県の妙義山ですね。ここは都心からでも1時間ほどで行けて、しかも高速道路を降りて15分くらいで着くスポットなんです。広い駐車場もあり、トイレもある。空は暗いし、車のライトに邪魔されることもそんなにないので、星を撮影する人たちにとってはすごく都合のいい環境がそろっています。

もう一つは、やっぱり、先ほどもお話しした星の村天文台。僕が宇宙をもう一回楽しもうと思ったきっかけでもありますしね。


妙義山で撮影した天の川
© Tomohiro Sugaya

―そうですね。星の村天文台の魅力は何でしょうか。

菅谷さん:単純に、天文台を楽しむのもいいですし、改めて星の村天文台の歴史や天文台の皆さんのことを知ると、震災後の復興など、天文台に関わってきた人たちの色々なストーリーがある。天文台のスタッフの方々の人柄もとても良くて、面白い。星の村天文台で星を見るというのは、そういう人の物語とかも含めて体験できる場所。もちろん、素敵な星空を見ながら星の解説も聞けるし、これまでの天文台の歴史的なところにも触れられる。そういうところが星の村天文台の魅力だと思います。

―確かに。人の魅力や背景にある物語。そういったところを知るとますます好きになりますね。
みなさんにおススメしたい星の楽しみ方などありますでしょうか。

菅谷さん:普通に双眼鏡や、天体望遠鏡で星を見るのも好きですが、僕はわりと星を撮影したいと思う方。たとえば、月を撮るにしても満月を撮るだけではなくて、細い月の時に見えることができる地球照なども撮ると肉眼でみたときとは違う感じで写る。また長時間露光をすると、北極星を中心に星がぐるっと回転しているような素敵な写真が撮れる。天の川も、写真で撮ると色も星の数も全然違う夜空の景色としてとることができる。星の写真って、撮りかたを工夫すると肉眼では見えない違った不思議な写真が撮れたりします。これは、星を楽しむ一つの方法ですね。

2017年8月、アメリカの皆既日食ツアーで行ったときに撮影した北極星。
© Tomohiro Sugaya

―確かに。同じ星空でも目で見た時とは違う景色がみれますもんね。それは一つの楽しい星見スタイルですね。
最後に、仕事以外に、やりたいことはありますでしょうか。

菅谷さん:季節をちゃんと楽しむことをしたいですね。だから、個人的に、季節ごとに書道とお茶を楽しめるイベントも友達と一緒に企画してやっています。日本の文化に触れながら、日本の四季を楽しむ。今の自分と向き合って、自身の心に浮かんだ言葉を書いて楽しんで、終わった後はみんなでお茶を飲むというイベントです。こういうとなんかすごく高尚なことをやっているように見えるかもしれませんが、企画している僕自身、そんな簡単に上手く言葉が出てくるわけではないです。ただ半紙に向き合っても書きたい言葉は出てこなかったりするので、季節を写し出した写真を用意してそれに合うことばを考えてもらったり、七夕の時期には短冊に書く願い事を考えたり、年の終わりには自分なりにどんな1年だったか漢字一字で表してみたり、季節と絡めて楽しめるようにしています。そうやってちゃんと、日本の四季を感じながら暮らした方が、生活が豊かになるんじゃないかなと思うので、個人的に星の写真を撮るにしても、季節ごとの星座と草花を一緒に撮っていきたいと思っています。

―季節をちゃんと感じるコト。これはせわしなく生きている現代に人たちに、とても必要な時間なのかもしれませんね。
書道のイベントもとても興味あります!またこれについては別の機会にお話しを伺えれば嬉しいです!本日は貴重なお話をありがとうございました!

以上

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